一般貨物自動車運送事業(いわゆる「緑ナンバー」)の許可を取るうえで、多くの方が最初につまずくのが「お金の要件(財務要件)」です。
車両台数や営業所の場所はイメージしやすい一方で、「いくら自己資金を用意すればいいのか」「資金計画はどう書けばいいのか」が分かりにくく、結果として申請が長期化してしまうケースも少なくありません。
この記事では、これから一般貨物自動車運送事業で開業したい方向けに、財務要件の基本から、所要資金の考え方、自己資金の目安、よくある勘違い・失敗例まで、実務的な視点で分かりやすく解説します。
財務要件の全体像:何を満たせばいいのか
まず押さえておきたいのは、「財務要件」とは単に“残高が多ければいい”という話ではなく、「事業計画に見合った資金計画が合理的かどうか」を審査されるという点です。
国土交通省の許可基準では、概ね次のようなポイントが求められます。
- 事業開始に必要な所要資金(必要資金)を、計画に基づいて適切に見積もっていること。
- その所要資金について、資金調達方法に合理性があること(自己資金・借入金などの内訳が明確)。
- 所要資金に対し、同額以上の自己資金を確保していること。
- 自己資金を、申請日から許可日まで継続して維持していること(途中で大きく減らしていないこと)。
つまり、「いくら必要か」を計画書で示し、その金額を裏付ける自己資金を証拠書類で示し、それが許可まで維持されている、という3段階が揃って初めて財務要件をクリアできます。

所要資金とは?内訳と計算の考え方
所要資金の定義
所要資金とは、「事業開始時に必要な設備投資+開業後しばらくの運転資金を合計したもの」です。
一般貨物の場合、国交省の申請様式(様式2「事業開始に要する資金及び調達方法」)に沿って、次のような項目ごとに金額を積算します。
主な費目と期間の目安
多くの実務解説では、各費目を次のような期間分で計上することが一般的です。
- 車両費
- 営業所・車庫等の施設費用
- 保険料
- 各種税金
- 運転資金
- 登録免許税・その他諸経費
これらを一つひとつ事業計画に当てはめていくことで、「事業開始にあたり、最低限これだけの資金が必要」というライン(所要資金)が見えてきます。
典型的な所要資金の感覚値
実務家の多くは、「計画にもよるが、所要資金は2,000万〜2,500万円程度になることが多い」と述べています。
車両台数が多い、車両単価が高い(大型車中心)、地代家賃が高いエリアに営業所を構える、などの要因が重なると、3,000万円を超える所要資金になるケースもあります。
自己資金要件:どこまで求められるのか
自己資金の基本ルール
財務要件の「肝」は、算出した所要資金に対し、その100%以上の自己資金を用意しているかどうかです。
ここでいう自己資金は、主に次のようなものを指します。
- 普通預金・当座預金・定期預金などの預貯金残高
- 会社名義・個人名義ともに、事業に充当可能なもの
一方で、次のようなものは、自己資金としては原則認められないか、評価が厳しくなります。
- 手元現金(タンス預金など)
- 借入金を一時的に入金しただけの預金(返済義務のあるもの)
- 評価の難しい有価証券・仮想通貨など(運輸局ごとに判断が分かれやすい部分)
自己資金はいくら必要か(目安)
もちろんケースバイケースではありますが、実務上は「自己資金2,000万〜2,500万円以上を求められる事例が多い」とする解説が多数です。
とくに、
残高証明とタイミング:維持できているかが重要
2回チェックされるのが一般的
自己資金は、「一瞬だけ残高があればよい」というものではなく、申請から許可まで継続的に維持されていることが重視されます。
そのため、多くの運輸局では次のようなタイミングで残高を確認します。
- 許可申請時点の残高証明書または通帳コピー
- 許可処分前の時点(法令試験合格後など)の残高証明書
この2回の証明で、「所要資金以上の自己資金を継続して保有していたか」がチェックされるイメージです。
処理期間と資金管理
許可の標準処理期間はおおむね数か月(例:4〜6か月程度)とされていますが、その間に大きな設備投資や多額の支出を行うと、自己資金残高が所要資金を下回ってしまうことがあります。
その場合、追加の説明や再提出が必要になったり、最悪の場合、許可が下りないこともあり得ますので、許可が出るまでは大きな支出を避ける、資金移動を細かく管理することが重要です。
法人・個人事業主ごとの注意点
法人で申請する場合
法人で一般貨物の許可を申請する場合、自己資金は基本的に法人名義の預貯金で確認します。
ただし、設立直後の新設法人などで法人単体の預金が十分でない場合、代表者個人の預金を含めて評価されることもありますが、その場合も「事業に充当できる状態」であることが必要です。
また、既に決算期を迎えている法人の場合、直近決算書上の財務内容(純資産の状態など)もチェックされるため、債務超過や大幅な赤字決算が続いていると、財務基盤が脆弱と判断される可能性があります。
個人事業主で申請する場合
個人事業主の場合は、個人名義の預貯金が自己資金として評価されます。
このとき、生活資金と事業資金が混在しがちですが、
よくある勘違い・つまずきポイント
勘違い1:借金して預金を作ればOK?
借入金そのものは否定されていませんが、「借入金を一時的に預金口座へ入れて残高を膨らませただけ」の状態は、自己資金とは見なされません。
自己資金はあくまで、返済義務のない自前の資金ですので、
勘違い2:開業後にすぐ売上が入るから大丈夫
「取引先と契約が決まっているから、すぐ売上が入る」というご相談も多いですが、財務要件はあくまで開業時点での資金力を問うものです。
売上の入金サイト(例:末締め翌々月払い等)によっては、開業後しばらくは支払だけが先行しますので、運転資金が不足すると、せっかく取った許可を活かせない事態にもつながります。
勘違い3:決算が赤字だと絶対に許可が取れない?
一般貨物とは別制度ですが、貨物利用運送事業では「純資産が赤字の場合は登録・許可ができない」と明確にされています。
一般貨物でも、債務超過や極端な財務悪化があれば、財務基盤が脆弱と判断される可能性が高く、決算内容を含めた慎重な検討が必要です。
モデルケースで見る所要資金と自己資金のイメージ
ここでは、イメージしやすいように、簡略化したモデルケースを紹介します。
ケース1:中小規模(2トン車3台・リース)
- 車両:2トントラック3台(リース、1年分リース料計上)
- 営業所・車庫:賃貸、賃料1年分+敷金・礼金
- ドライバー:3名、運行管理者兼務
- その他、保険・税金・諸経費を含めて積算
このようなケースでも、所要資金が「2,000万円前後」となることは珍しくありません。
したがって、自己資金としては2,000万〜2,500万円程度を準備しておきたいラインになります。
ケース2:大型車中心(10トン車2台+4トン車2台・購入)
- 高価格帯の大型車を中心に、車両を購入
- 車庫・営業所も広めの物件を賃借
- ドライバーも複数名を配置
この場合、車両費だけでかなりの金額となり、所要資金が3,000万〜4,000万円を超えるケースもあるため、自己資金は3,000万円以上を目安とする必要が出てきます。
許可取得後の財務管理も重要
財務要件は「許可を取るためだけ」のものではなく、その後の事業運営にも直結します。
許可取得後、一般貨物自動車運送事業者は毎事業年度終了後100日以内に「事業報告書」を提出し、「損益明細表」などで事業の収支状況を報告しなければなりません。
- 運賃収入・雑収入の内訳
- 原価や経費の構成
- 固定資産・負債・純資産の状況
といった項目が毎年チェックされるため、開業時の資金だけでなく、その後の利益確保・資金繰り管理もきわめて重要です。
まとめ:早めの資金診断と専門家の活用を
一般貨物自動車運送事業の財務要件は、
とくに、「自分の計画だと所要資金はいくらになりそうか」「今ある預金で足りるのか」は、ご自身だけで計算すると大きくブレることが多く、後から修正すると時間も手間もかかります。
当センターでは、
「これから緑ナンバーで開業したい」「資金面が不安で一歩踏み出せない」という方は、お気軽にご相談ください。オンライン・電話・メールなど、お客様の状況に合わせた形で丁寧にご説明いたします。
一般貨物の許可取得申請、財務要件についてのご相談・お問い合わせ
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YAS行政書士事務所 代表 朝倉良樹
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