環境問題への意識が高まる現代において、企業の物流戦略も変革を迫られています。モーダルシフトは、トラック輸送から鉄道・船舶輸送へ転換することで、CO2排出量を最大約90%削減できる有効な手段です。この記事では、貨物利用運送におけるモーダルシフトのメリット、特に鉄道利用運送に焦点を当て、具体的な導入方法や国交省認定の成功事例をご紹介します。

なお、鉄道を使ったモーダルシフトの受け皿となる鉄道貨物利用運送事業を営むには、国土交通大臣の登録または許可が必要です。事業開始の要件については、「貨物利用運送事業の許可・登録を完全解説|1種・2種の要件・法改正・罰則まで行政書士が徹底ガイド」で詳しく解説しています。

モーダルシフトで環境負荷を低減!鉄道利用運送のメリットと導入事例

1. モーダルシフトとは?基礎知識と重要性

モーダルシフトの定義と目的

モーダルシフトとは、輸送手段(Modal)をより環境負荷の低い手段へ転換(Shift)することを指します。具体的には、トラック輸送から鉄道輸送や内航海運(船舶輸送)への切り替えを意味します。

主な目的は以下の通りです。

  • CO2排出量の削減(地球温暖化対策)
  • トラックドライバー不足への対応
  • 交通渋滞の緩和
  • エネルギー消費の削減
  • 企業のESG・SDGs貢献

なぜ今モーダルシフトが重要なのか?

現代の物流業界は、「物流2024年問題」という深刻な課題に直面しています。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限規制が適用され、国土交通省の試算では2030年度には34%の輸送力不足が生じると予測されています。

このような状況下で、企業は「環境負荷の低減」と「輸送力の確保」という二つの課題を同時に解決する必要があります。モーダルシフトはその有力な解決策として、政府・業界から大きな注目を集めています。

政府の最新動向:2024年11月「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」

2024年11月、国土交通省は「新たなモーダルシフトに向けた対応方策」を公表し、以下の方向性を示しました。

  • 鉄道(コンテナ貨物)・内航海運(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増
  • 31フィートコンテナの利用拡大を優先的に促進
  • 中長期的に40フィートコンテナの利用拡大も促進
  • 貨物駅の施設整備

また、改正物流効率化法に基づく規制的措置(一定規模以上の事業者への中長期計画策定義務など)も進行しており、事業者にはより踏み込んだ取り組みが求められています。2024年・2025年の法改正動向については、貨物利用運送事業の許可・登録完全ガイドの「法改正」セクションもあわせてご確認ください。

2. 鉄道利用運送のメリット

① CO2排出量を約90%削減(国交省データ)

国土交通省の公表データによれば、1トンの貨物を1km運ぶ際のCO2排出量は、以下の通り大きな差があります。

  • トラック(営業用貨物車):216 g-CO2/t・km
  • 鉄道:約20 g-CO2/t・km(トラックの約1/11)
  • 船舶:43 g-CO2/t・km(トラックの約1/5)

つまり、トラック輸送から鉄道輸送に切り替えることでCO2排出量を約90%削減、船舶輸送に切り替えることで約80%削減する効果が見込めます(出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」)。

② 長距離輸送におけるコストメリット

国土交通省の試算では、東京発博多行きの輸送コスト比較において、500km以上の長距離輸送では鉄道輸送の方が割安になる結果が示されています。特に名古屋以西では、鉄道輸送がコスト面で明確に優位となります。

また、燃料費高騰やドライバー人件費上昇の影響を受けにくく、安定した輸送コストを実現できる点も大きなメリットです。

③ 安定輸送と定時性の確保

鉄道輸送は、道路交通の混雑や天候の影響を受けにくいため、高い定時性を実現できます。これにより以下のようなメリットが生まれます。

  • 製造業:必要な時に必要な部品を確実に調達 → 生産計画の安定化
  • 小売業:欠品防止 → 顧客満足度の向上
  • BCP(事業継続計画):災害時にも比較的影響を受けにくい

④ ドライバー不足への対応

鉄道1編成で10tトラック約65台分の貨物を輸送可能です。ドライバー不足が深刻化する中、少ない人員で大量輸送を実現できる鉄道輸送の価値は今後さらに高まります。

3. モーダルシフト導入のステップ

Step 1:現状分析と課題の明確化

まず自社の物流における現状を詳細に分析し、何を改善したいのかを明確にします。以下のデータを収集・分析しましょう。

  • 輸送量・輸送距離・輸送頻度
  • 輸送コスト・リードタイム
  • 現状のCO2排出量
  • 輸送ルート上のボトルネック

Step 2:輸送ルートと輸送手段の選定

分析結果を踏まえ、最適な輸送ルートと手段を選定します。鉄道輸送が難しい区間については、内航海運やトラックとの組み合わせ(モーダルコンビネーション)も検討しましょう。

選定の際の主な判断基準は以下の通りです。

  • 輸送コスト・リードタイム
  • CO2排出量
  • 輸送品質(温度管理・振動対応など)
  • 災害時の代替ルート確保

Step 3:パートナー企業との連携

モーダルシフト成功の鍵は、信頼できる貨物利用運送事業者(フォワーダー)との連携です。鉄道事業者との輸送ダイヤ調整、貨物駅の利用、集配の手配などを一括して任せられるパートナーを選ぶことが重要です。

4. 国交省認定の成功事例

事例1:3運送会社による鉄道ブロックトレイン活用

中部地区と九州地区間の特別積合せ運送において、3社共同で鉄道のブロックトレイン(一部貸し切り列車)を活用したモーダルシフト事例です。

従来は中部地区の部品センターから集荷した貨物を拠点別に積み替え、九州地区までトラック輸送していましたが、モーダルシフト後は中部地区の拠点で鉄道コンテナに積み替え、ターミナル駅経由で鉄道輸送に切り替えました。

  • CO2排出量:約74%削減
  • ドライバー運転時間:約85%削減

(出典:国土交通省「モーダルシフトに関する事例(物流総合効率化法の認定事例)」)

事例2:ビールメーカー4社によるRORO船共同輸送

関東地区・関西地区間の輸送において、4社のビールメーカーが共同でRORO船(貨物を積んだシャーシごと輸送する船舶)を活用したモーダルシフト事例です。

  • CO2排出量:約59%削減
  • ドライバー運転時間:約77%削減

複数社が連携することで、積載効率を高めつつコストを分散できるため、中小規模の荷主にも応用しやすいモデルです。

事例3:ダイキン工業等3社による専用大型コンテナ開発

ダイキン工業・下関三井化学・活材ケミカルの3社は、産業廃棄物を再利用した鉱物を運ぶための専用大型コンテナを共同開発。輸送距離の大部分を船舶輸送に転換することで、CO2排出量を69.2%削減し、国土交通省の「海運モーダルシフト大賞」を受賞しました。

5. 鉄道利用運送事業を始めるには?

モーダルシフトの需要拡大を受け、鉄道を使った貨物利用運送事業に参入する企業も増えています。鉄道利用運送を営む場合、以下の区分で国土交通大臣の登録または許可が必要です。

  • 第1種貨物利用運送事業(登録制):鉄道のみを利用して貨物を運送する場合
  • 第2種貨物利用運送事業(許可制):鉄道+トラック集配を一貫して行う場合(ドア・ツー・ドア輸送)

特にモーダルシフトサービスとして荷主にワンストップで提供する場合は、集配を含む第2種の許可が必要となるケースが多くなります。

登録・許可の具体的な要件(営業所・純資産300万円以上・実運送事業者との契約書など)、2024-2025年の法改正、違反時の罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)については、【完全版】貨物利用運送事業の許可・登録ガイドで詳しく解説していますので、事業参入をご検討の方は必ずご一読ください。

まとめ:モーダルシフトで持続可能な物流を実現

モーダルシフトは、CO2削減(最大約90%)・コスト削減・安定輸送・ドライバー不足対応など、現代社会が求める多くのメリットをもたらします。2024年問題、脱炭素社会、ESG経営といった潮流の中で、企業のモーダルシフト取り組みは今後さらに重要性を増していきます。

政府の「今後10年で鉄道・内航海運の輸送量を倍増させる」という目標のもと、物流総合効率化法による補助金制度なども整備されています。これらの支援策を活用し、自社の物流体制を見直すタイミングに来ていると言えるでしょう。


鉄道利用運送・モーダルシフト事業への参入をご検討の方へ

「自社でモーダルシフトに対応した輸送サービスを提供したい」「鉄道を使った貨物利用運送事業を始めたい」という企業様は、まず貨物利用運送事業の登録・許可を取得する必要があります。

👉 申請要件・手続きの詳細は、貨物利用運送事業の許可・登録を完全解説|1種・2種の要件・法改正・罰則まで行政書士が徹底ガイドをご覧ください。

貨物運送専門のYAS行政書士事務所では、年間多数の貨物利用運送事業の登録・許可実績を持ち、第1種・第2種のいずれにも対応しています。モーダルシフトを見据えた事業計画のご相談から申請代行まで、ワンストップでサポートいたします。

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